ELYZA、「AIによるAI開発」の研究を推進する「ELYZA RSI Research」を設立。基盤モデル・評価・自律改善に関する研究成果を公開 〜研究成果を活用した「バーティカルAI事業」も開始、第一弾として「ELYZA Voice Agent」を開発〜

2026.10.02プレスリリース

 株式会社ELYZA(本社:東京都文京区、代表取締役:曽根岡 侑也、以下「当社」)は、AIがAIが自身の能力や開発プロセスを反復的に改善し、その成果を次の開発に活用する「再帰的自己改善(Recursive Self-Improvement、以下「RSI」)」に関連する研究開発を推進する組織として、「ELYZA RSI Research」を設立いたします。これまで社内で進めてきた「AIによるAI開発」の研究開発を、ELYZA RSI Researchの設立を通じて加速します。また、RSI関連の研究開発に伴うリスクを踏まえ、安全性を重要な研究課題の一つと位置づけ、安全性に配慮した研究環境や体制を整備してまいります。

 あわせて、これまでの「AIによるAI開発」の研究を通じて構築した「自律研究基盤」を活用し、さまざまな業界・業務に特化したバーティカルAI事業を展開します。その第一弾として音声対話AIエージェント「ELYZA Voice Agent」を開発しました。


ELYZA RSI Research立ち上げの背景

 現在のフロンティアモデル開発では、AIの開発・改善プロセスの一部をAI自身が担う「AIによるAI開発」が進みつつあり、研究開発の効率化や開発サイクルの高速化につながるなど、その重要性が高まっています。こうした動きの延長線上に位置づけられる、AIが自身の能力や開発・改善プロセスを反復的に改善し、その成果を次の開発に活用するRSIについても、その実現可能性に注目が集まっています。学術界においても、RSIをテーマとしたワークショップが開催されるなど、国際的な研究コミュニティで議論や研究が活発化しつつあります。国内でも、RSIに関連する研究や取り組みが現れ始めている一方、RSIを明示的な研究開発テーマとして掲げた取り組みはまだ限られており、今後の研究の進展が期待される領域です。

 これまで当社は、LLMの開発や評価ベンチマークの作成に加えて、AIエージェントの安全性や処理精度の向上を支えるハーネス開発も行い、AI開発に関する知見と実績を積み重ねてきました。その知見を土台として、「AIによるAI開発」の研究開発を推進する「ELYZA RSI Research」を設立します。ELYZA RSI Researchでは、技術的な可能性を追求するとともに、潜在的なリスクも踏まえ、安全性に配慮した責任ある研究開発を進めてまいります。


「AIによるAI開発」の高度化に向けて

 ELYZA RSI Researchでは、「AIによるAI開発」の高度化に向けて、これまで人間のAIリサーチャーが担ってきた研究開発プロセスの一部を、AIエージェントが担うための研究を進めます。具体的には、AIエージェントが基盤モデルやハーネスを開発・改善し、その成果を評価機構で検証します。さらに、得られたフィードバックを次の開発に反映することで、改善サイクルを継続的に回す仕組みを研究します。

 将来的には、基盤モデルやハーネスだけでなく、開発・改善を担うAIエージェント自身も改善対象に含め、改善の成果をその能力や開発・改善プロセスに反映することで、再帰的な改善サイクルの実現を目指します。

 当社では、「AIによるAI開発」の進展を大きく4つの段階に整理しています。主に人がモデル開発、ハーネス改善、評価機構の設計を担う段階から、AIが提示した改善案を人が都度判断する段階、個々の開発・改善をAIに委ね、その成果を人が評価する段階へと進むにつれて、人の関与は徐々に少なくなっていきます。最終的には、人が目的と制約を設定し、その範囲内でAIが自律的に開発・改善のサイクルを回し続ける段階へと進展する可能性があります。

当社の研究開発の進捗状況

 ELYZA RSI Researchでは、「AIによるAI開発」の実現に向けて、基盤モデル、ハーネス、評価機構の各領域において、AIが開発・改善を担う範囲の拡大や自律性の向上を目指した研究開発を進めております。なお、現時点ではRSIに至る前段階の要素技術の研究であり、RSIそのものを実現したわけではございません。

成果①:基盤モデルの開発

 当社は従前よりオープンモデルに対して追加のPost-trainingを実施し、性能向上を図る取り組みを進めてきました。「AIによるAI開発」の実現に向けて、より少ない人的工数で効率的にモデルの学習や評価を行えるよう、社内のLLM学習基盤を整備しました。この学習基盤を、国立情報学研究所 大規模言語モデル研究開発センター(LLMC)が開発した国産オープンモデル「llm-jp-4」シリーズに適用したところ、人間が介在する作業を1〜2人日程度に抑えながら、Mid-training、Post-trainingから評価までの一連のプロセスを実行し、モデルの性能向上を確認しました。

本モデルの性能は以下の通りです。

 今回開発したモデル「ELYZA-Thinking-1.0-llm-jp-4-33b」および「ELYZA-Thinking-1.0-llm-jp-4-32b-a3b」は商用利用可能な形で本日公開いたします。

 ELYZA-Thinking-1.0-llm-jp-4-33b:https://huggingface.co/elyza/ELYZA-Thinking-1.0-llm-jp-4-33b

 ELYZA-Thinking-1.0-llm-jp-4-32b-a3b:https://huggingface.co/elyza/ELYZA-Thinking-1.0-llm-jp-4-32b-a3b


成果②:ベンチマークの半自動作成

 AIによる開発・改善を自律的に進めるためには、その成果を客観的に評価し、次の改善につなげる評価機構が重要です。当社では、この評価機構を構成するベンチマークについても、AIを活用して半自動で作成する仕組みの研究を進めています。

 今回、その取り組みの一環として、日本語のカスタマーセンターにおける問い合わせ応答業務を対象としたベンチマーク「ELYZA Agent Tasks: Customer Service」を作成しました。本ベンチマークは、音声・テキストの双方に対応しており、適切な業務手順(SOP)を選択したか、SOPに沿って適切に処理を進めたか、ツールを正しく利用したか、最終的な処理結果が正しいかなど、業務プロセスの各段階におけるAIエージェントの能力を評価できます。


 本ベンチマーク「ELYZA Agent Tasks: Customer Service」は本日公開いたします。

 https://github.com/elyza-inc/elyza-agent-tasks-customer-service


成果③:自律的なハーネス改善

 基盤モデルの開発に加えて、当社が開発した自律改善エージェントを用いて、AIエージェントの動作やツール利用を制御するハーネスを自動的に改善する研究にも取り組んでいます。

 2種類の開発系ベンチマークを対象に、自律改善エージェントによるAIエージェントのハーネス改善を行いました。その結果、各ベンチマークにおいて、タスク成功率がそれぞれ14.4ポイント、27.2ポイント向上しました。これにより、自律改善エージェントを用いてハーネスを自動的に改善することで、AIエージェントの開発タスクにおける遂行能力を高められる可能性を確認しました。

 問い合わせ応答業務を対象とした実験では、上述の「ELYZA Agent Tasks: Customer Service」を用い、精度向上とコスト削減の両立を目的として、自律改善エージェントにハーネスの改善を実行させました。実行結果をもとに失敗原因を分析し、改善策を立案・実装したうえで再評価する一連のループを繰り返すことで、評価スコアが継続的に向上することを確認しました。

 その結果、改善プロセスでは使用していないテストデータにおいても、完遂率が34.3%から52.9%へと18.6ポイント向上したことを確認いたしました。

 また、精度向上とコスト削減の双方を目的として自律改善を行った場合、精度向上のみを目的とした場合と比較して、精度はほぼ維持しながら、推論コストを67%削減できることを確認しました。



研究開発から社会実装へ

当社は、本研究開発で得られる「AIによるAI開発」の研究成果を「自律研究基盤」として整備します。そして、さまざまなパートナーと連携し、業界・業務に特化したAIエージェントの開発に取り組みます。業界・業務ごとの手順や判断基準、完了条件などを評価基準として定義し、自律研究基盤を活用してAIエージェントの開発・評価・改善を繰り返すことで、パートナーと共に各領域の業務要件に適したAIエージェントを開発・提供してまいります。

 その第一弾として、音声モデルを活用した音声対話AIエージェントサービス「ELYZA Voice Agent」を開発しました。

 詳しいサービス内容は以下のプレスリリースをご覧ください。

 URL:https://elyza.ai/news/2026/10/02/voiceagent


今後の展望

 ELYZA RSI Researchでは、RSIの技術的な可能性や課題に対する理解を深めることを目的に、国内における研究開発を推進します。

 日本発の基盤モデル開発や領域特化型AIエージェントの社会実装に加え、研究対象をデジタル空間から物理空間へと広げ、ロボティクスをはじめとするフィジカルAI領域の研究開発にも取り組みます。


安全性を重視した責任ある研究体制へ

 ELYZA RSI Researchでは、RSIに関する研究開発に伴う想定外の挙動や技術の悪用リスクなども踏まえ、安全性を重要な研究課題の一つと位置づけています。研究成果や取り組みに関する適切な情報公開を通じて透明性の向上に努めるとともに、安全性に配慮した研究環境や体制を整備し、技術の持続的かつ責任ある発展を目指します。


ELYZA 会社概要

社名 :株式会社ELYZA

所在地 :東京都文京区本郷3-15-9 SWTビル 6F

代表者 :代表取締役 曽根岡 侑也

設立 :2018年9月

URL :https://elyza.ai/